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海外在住者向け! バーチャルオフィスの活用方法

近年、海外在住の方が日本に法人を設立するケースが増えてきています。平 成27年3月の法改正により、代表取締役の居住地や出資の手続きに関するルー ルが緩和されたことが主な要因です。

なかには日本にオフィスを構えずにリモートで業務を行う方もみられ、その 場合に「バーチャルオフィス」が活用される傾向があります。実際にカスタ マープラスでも海外在住者のお客様が増えてきており、日本での法人設立方 法についてのお問い合わせが多くなってきました。

そこで、今回は「日本で会社を立ち上げたい」とお考えの海外在住者に向け て、日本での法人設立方法を詳しく解説します。さらに海外在住者に人気が 高い「資産管理会社」の設立における基礎知識にも触れながら、日本での法 人設立時にバーチャルオフィスを利用するメリットについてまとめました。

海外在住者におけるバーチャルオフィスの利用比率について

カスタマープラスの会員様のなかには海外在住者も多く、日本人だけでなく 外国人の会員様も多数いらっしゃいます。2022年6月時点での利用比率と法人 設立比率は以下の通りです。

海外在住の日本人 海外在住の外国人
利用比率 30% 70%
法人設立比率 10% 90%

上記を見ると、海外在住の日本人よりも海外在住の外国人のほうがカスタ マープラスのバーチャルオフィスを多く利用されており、さらに日本での法 人設立比率も高いことがわかります。現在は居住地や国籍に関わらず日本で の会社設立がしやすい時代であり、その流れは今後さらに加速化していくこ とでしょう。

日本で会社を設立する方法

次に、海外在住者が日本で会社を設立する方法について解説します。

平成27年3月の法改正により、それ以前に比べて日本での法人設立がぐんとしや すくなりました。具体的にどのような条件が緩和されたのか、法改正前と法改正 後の違いを見てみましょう。

代表取締役の住所 出資の手続き
法改正前 代表取締役のうち、最低1人は日本に住所を有していなければならなかった 日本に住所がないと資本金振込み先口座の用意ができないため、日本在住のビジネスパートナーに協力してもらう必要があった
法改正後 代表取締役の全員が海外在住でも外国人でも可能 使用する預金通帳の口座名義人の範囲が緩和され、発起人及び設立時取締役以外の者(第三者・法人も含む)まで拡大された

つまり、現在では代表取締役は必ずしも日本に在住する必要はありません。ま た、預金通帳の口座名義人に対する条件が大幅に緩和されたことにより、海外 在住の日本人はもちろん外国人の方にとっても出資の手続きがしやすくなりま した。

では、海外在住者が日本で会社を設立する際にはどのような書類や手続きが必 要なのか、以下で詳しく見ていきましょう。

海外在住者が日本で会社を設立する際に必要な書類

海外在住者が日本で会社を設立する際には、以下の3点の書類を提示する必要 があります。

【必要書類その1】署名(サイン)証明書

海外在住の外国人の方、あるいは日本で住民票を抜いている日本人の方が日本 で会社を設立する際には、「署名(サイン)証明書」が必要です。署名証明書 とは日本でいう「印鑑証明書」のことで、合同会社と株式会社のどちらを設立 するのかによって必要枚数等が異なります。

法人形態 代表者のサイン証明書 役員のサイン証明書 発起人
合同会社 代表社員のもの1通 不要 不要
株式会社 代表取締役のもの1通 全員分必要 全員分必要

なお、署名証明書には日本の印鑑証明書に準じた内容が記載されている必要が あり、下記のうち一項目でも抜けていると受理されないためご注意ください。

・氏名
・住所(外国での居住地)
・生年月日
・サインまたは印影(印鑑文化のある国)

もしも海外在住の方で「署名証明書はどこで作成してもらえばいいのか」とお 悩みの方は、以下の「添付可能な署名証明書」をご確認ください。

【添付可能な署名証明書(B国に居住するA国人の場合)】

・本国に所在する本国官憲作成(例:A国にあるA国の行政機関)
・日本に所在する本国官憲作成(例:日本にあるA国の大使館)
・第三国に所在する本国官憲作成(例:B国にあるA国の大使館)
・本国に所在する公証人作成(例:A国の公証人)

【必要書類その2】外国語で作成された添付書面の翻訳

商業登記の申請書に「外国語で作成された書面」を添付する場合には、原則と して日本語の訳文も添付する必要があります。ただし、場合によっては翻訳を 一部省略することも可能です。

詳しくは法務省の公式ホームページに記載されている「商業登記の申請書に添 付される外国語で作成された書面の翻訳について」をご確認ください。

【必要書類その3】資本金の払込証明書

株式会社の設立において「発起設立(発起人の自己資金により、発行株式の全 部を引き受けて株式会社を設立する方法)」の場合には、出資にあたる払込み があったことを証する書面の添付を求められます。その際には、以下の2つの 書面を合わせたものを「払込みがあった書面」として取り扱うことができます。

①払込取扱機関に払い込まれた金額を証明する書面(設立時代表取締役または 設立時代表執行役が作成)
②払込取扱機関における口座の預金通帳の写し、または取引明細表など払込取 扱機関が作成した書面

上記のうち、②の預金通帳の口座名義人として認められるのは、基本的には 「発起人」あるいは「設立時取締役」です。ただし、特例として発起人および 設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合には、「発起人及び 設立時取締役以外の者(第三者・法人も含む)」も該当します。(第三者が口 座名義人となっている預金通帳の写しを添付する場合には、委任状として「発 起人が第三者に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面」 の添付も必要です)

なお、上記の「払込取扱機関」における該当の有無は以下をご確認ください。

【「払込取扱機関」の該当の有無】
内国銀行の日本国内本支店(例:東京銀行の大阪支店)
内国銀行の海外支店(例:東京銀行のニューヨーク支店)
外国銀行の日本国内支店(例:ニューヨーク銀行の東京支店)
外国銀行の海外本支店(例:ニューヨーク銀行のボストン支店) ×

書面申請時の「契印」について

法人登記の申請方法には「書面申請」と「オンライン申請」の2種類があり、書 面申請で会社設立の登記申請書が複数ページに及ぶ場合は各ページのつづり目に ハンコを押印する必要があります。この作業を「契印」といい、契印には登記申 請書に押印したハンコと同一のものを使用しなければなりません。

もしも外国会社としての登記をしていない外国会社や印鑑を所有していない外国 人の場合は、以下の方法であれば契印の代用として認められます。

・各ページのつづり目に署名(割サイン)をする
・各ページの余白部分に署名する
・各ページの余白部分にイニシャルを自書する
・袋とじの部分(表紙と裏表紙の両方)に署名する

日本に「資産管理会社」を設立する海外在住者が急増中!

日本に会社を設立する海外在住者が増えているなかで、特に多くみられるのが 「資産管理会社」の設立です。日本では諸外国にみられるような外国人向けの規 制(永住権や日本国籍の有無など)がなく、土地・建物ともに外国人の不動産所 有が認められていることから、投資や自己使用の目的で日本の不動産を購入し、 資産管理会社を設立するという起業スタイルに注目が集まっています。

そもそも資産管理会社とは

資産管理会社とは、家族や個人の資産を管理するための法人のことです。すで に資産を所有している方が節税を目的として設立するケースが多く、経費の計 上時や相続対策上において大きなメリットがあります。

また、資産を持っていない方も、不動産投資をするために新設の資産管理会社 を設立して融資を受けることが可能です。法人を利用した不動産投資には税制 上・融資上のさまざまなメリットがあるため、近年では不動産投資において資 産管理会社の設立はスタンダードになりつつあります。

資産管理会社を設立するメリット

資産管理会社を設立する主なメリットは以下の通りです。

【メリットその1】経費化できる範囲が広い

資産管理会社を設立して不動産賃貸業を営む場合、収益を生むために使った費 用はすべて経費化して問題ありません。その範囲は個人で経費化できる範囲よ りも格段に広く、直接的に必要な費用以外も経費化できます。

たとえば法人名義の携帯代や社宅補助、打合せの食事代、法人名義の車両維持 費、役員の生命保険料、出張時の日当(要.旅費規程)などを経費として計上す ることが可能です。また、会社が自分自身へ支払う役員報酬や退職金も経費化 でき、その結果会社の利益が減少するため、法人税を軽減できるメリットがあ ります。

さらに役員報酬や退職金などには給与所得控除や退職所得控除が適用され、所 得税も軽減されることからトータルで税負担の大幅な減少を見込めます。

【メリットその2】社会保険への加入が可能

資産管理会社を設立することで、政府の社会保険(健康保険・厚生年金保険) に加入できる点も大きな魅力です。会社から支給する報酬や給与の金額次第で は、国民健康保険や国民年金の金額よりも安くなる可能性があります。

【メリットその3】資産の生前贈与が可能

個人の場合は、資産から受ける収入は本人の資産になります。しかし、法人で 収入を受けてそこから配偶者や子、孫に給与を支給することで、生前贈与の効 果がある点も注目したいポイントです。

【メリットその4】相続手続きをよりスムーズに行える

相続手続きを行いやすくなることも、資産管理会社を設立するメリットのひと つです。もしも資産の相続が発生する場合、不動産を共有持分等で承継するよ りも、生前に法人に売却して現金や法人株式として金融資産化しておくほうが スムーズに手続きできます。

日本での法人設立時にバーチャルオフィスを利用するメリット

日本での会社設立時に「業務スペースや設備は必要ない」とお考えなら、バー チャルオフィスを活用して法人登記を行うことをおすすめします。バーチャル オフィスとは「架空のオフィス」で、法人登記に必要な登記先住所をレンタル できる大変便利なサービスです。

バーチャルオフィスを利用する最大のメリットは、やはり固定費を抑えられる こと。事務所用の物件を借りる場合は敷金・礼金などの初期費用や毎月の賃料 がかかりますが、バーチャルオフィスなら基本的に登録料や月額費用のみで リーズナブルに運営できます。

なかにはバーチャルオフィスに届いた郵便物を海外に転送してもらえるサービ スもあり、日本に居住地を移さなくても海外から安心して事業運営を続けるこ とが可能です。

まとめ

現在は代表取締役の全員が海外に居住していても、さらには海外在住の外国人 でも日本に会社を設立できます。ただし、「署名証明書」や「外国語で作成さ れた添付書面の翻訳」が必要となるなど通常の法人登記手続きとは異なる点も あるため、今回ご紹介した書類の取得方法などを事前にチェックしておくとス ムーズです。

ぜひ「バーチャルオフィス」を活用しての法人登記も視野に入れながら、日本 での会社設立を安全かつ円滑に進めていきましょう。

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