これから起業しようとしているフリーランスの方、あるいは創業して間もないスタートアップ企業のなかには、「ベンチャーキャピタル」からの資金調達について検討している場合もあるのではないでしょうか。
実績がなくても多額の出資を得られる可能性のある頼もしい資金調達法ですが、ベンチャーキャピタルからの投資にはメリットだけでなくデメリットもあります。まずはどのような資金調達法なのかをしっかりと把握したうえで、自社への適性を慎重に見極める必要があります。
そこで、今回はベンチャーキャピタルの概要や出資を受けるメリット・デメリット、探し方などを詳しくまとめました。また、これから起業して法人を設立したいとお考えの方に向けて、登記利用可能な住所をリーズナブルにレンタルできる「バーチャルオフィス」の魅力についてもあわせてご紹介します。
ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業やスタートアップ企業など、将来的に成⾧を見込める企業を対象に出資を行う投資会社のことを指します。未上場時に投資し、投資先企業が上場・成⾧した後に株式や事業を売却することによって利益を得ています。
ただし、出資した企業が必ず上場や成⾧をするとは限りません。場合によっては出資金をほとんど回収できないケースもあるため、そういったリスクを極力軽減できるよう、ベンチャーキャピタルは出資している企業に対して経営支援も行うケースが一般的です。
次に、ベンチャーキャピタルが投資する目的と資金調達方法について押さえておきましょう。
ベンチャーキャピタルがベンチャー企業やスタートアップ企業に投資する主な目的は、キャピタルゲイン(当初の投資額と企業成⾧後の株価の差額)を獲得することです。企業の規模が小さい段階で投資を行い、投資先の企業の上場・成⾧後に株を売却すれば多くの利益を得られることから、まだ実績がない未上場のベンチャー企業やスタートアップ企業を対象に投資を行っています。
なお、ベンチャーキャピタルはキャピタルゲインの獲得だけでなく事業シナジーも追求する傾向があり、自社の事業内容との関連性が高い企業に出資するケースが多いです。
ベンチャーキャピタルが投資を行う際は、一般的には専門の投資ファンド(投資事業組合)を設立し、機関投資家や個人投資家・金融機関、事業会社などから出資を募ったうえでファンドマネージャーとして投資する方法が主流です。また、ベンチャーキャピタル自身が保有している資金を活用する形で投資を行うケースもみられます。
ベンチャーキャピタルの種類は、主に以下の7つです。
・金融機関系ベンチャーキャピタル
・政府系ベンチャーキャピタル
・大学系ベンチャーキャピタル
・事業会社系ベンチャーキャピタル
・地域系ベンチャーキャピタル
・海外系ベンチャーキャピタル
・独立系ベンチャーキャピタル
それぞれの特徴について、以下で詳しく見ていきましょう。
金融機関系ベンチャーキャピタルは、銀行や証券会社、保険会社などの金融機関を母体とするベンチャーキャピタルです。豊富な資金力があることから大規模な投資が可能であることが大きな特徴で、投資実績も豊富にあります。
政府系ベンチャーキャピタルは、国や地方自治体などが運営主体となり、公的資金を出資に適用している点が特徴です。収益性よりも国内産業の技術確保や維持促進に重点を置いて投資を行っています。
大学系ベンチャーキャピタルは、大学が出資しているベンチャーキャピタルです。大学や研究機関から生まれる技術やビジネスの支援を目的として投資しており、大学の研究に関連する事業を行っているベンチャー企業やスタートアップ企業が主な対象です。
事業会社系ベンチャーキャピタルは、事業会社が運営主体のベンチャーキャピタルです。特に大手企業が運営するケースが多く、先進的なビジネスモデルを展開する企業に出資することによって自社事業へのシナジー効果を図る狙いがあります。
地域系ベンチャーキャピタルは、特定の都道府県や市町村に所在している企業に対して出資を行うベンチャーキャピタルです。高い技術や成⾧性を持つ企業を探し出して投資や経営支援を行うことで、地域の産業振興に力を注いでいます。
海外系ベンチャーキャピタルとは、外資系企業が母体となって運営するベンチャーキャピタルのことを指します。国内系のベンチャーキャピタルよりも投資規模が大きく、豊富な投資実績・ノウハウを持っている点が大きな強みです。
独立系ベンチャーキャピタルとは、特定の親会社が存在せず、資本が独立しているベンチャーキャピタルのことをいいます。親会社や系列企業からの影響を気にすることなく、自由に出資判断を行って活動していることが特徴です。
続いて、ベンチャーキャピタルとその他の資金調達方法の違いについて解説します。
ベンチャーキャピタルと銀行融資の違いは、「返済義務の有無」にあります。
ベンチャーキャピタルはお金を融資するのではなく「出資」するため、原則として返済義務は発生しません。それに対して銀行からの資金調達は「融資」であり、指定された期間内に元金と利息を返済する義務が生じます。
また、ベンチャーキャピタルは出資先企業の経営に直接関わることが可能ですが、銀行にはそういった権利がないケースが一般的であることも両者における大きな違いです。さらに銀行融資では実績の少ないベンチャー企業やスタートアップ企業は融資を受けることが難しい一方で、成⾧性を重視するベンチャーキャピタルであれば新興企業でも出資を受けられるチャンスは大いにあります。
ベンチャーキャピタルと投資銀行・投資ファンドの違いは、「投資先企業の成⾧ステージ」にあります。ベンチャーキャピタルは将来的に成⾧が見込まれるベンチャー企業やスタートアップ企業を投資対象としていますが、投資銀行や投資ファンドは成熟した企業を対象に投資を行っています。
ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、主に以下のようなメリットを得られます。
ベンチャーキャピタルを利用する最大のメリットといえるのが、新興企業であっても多額の資金を調達できる可能性があることです。一般的に、起業から間もない場合や収益が安定していない場合は銀行からは融資してもらいにくい傾向がありますが、成⾧性・革新性を評価してくれるベンチャーキャピタルならそういった企業でも資金調達がしやすく、事業内容に共感してもらえれば大きな額の資金が手に入る可能性もあります。
銀行の融資とは異なり、返済の義務がない点もベンチャーキャピタルから受ける資金調達の魅力です。定期的な返済や利息の発生などがないことによって、ゆとりを持ってビジネス活動に専念できます。
ベンチャーキャピタルは、出資先企業に対して経営に関するアドバイスやビジネス戦略の策定、問題解決のためのサポートなどを行うケースが一般的です。そのため、出資を受けた企業はベンチャーキャピタルの持つ豊富な知識と経験を活用しながら、安心感を持って事業活動を進められます。
ベンチャーキャピタルはさまざまな企業や経営者とのコネクションを有していることから、出資を受けることによって自社のネットワーク構築にも役立ちます。ネットワークが広がるとその分ビジネスチャンスも拡大し、企業の成⾧スピードを速めることにもつながるでしょう。
ベンチャーキャピタルから出資を受けられると、「将来性が期待されている企業」として社会的信用度が向上する傾向があります。また、ベンチャーキャピタルからの資金調達によって財務状況が好転すれば、金融機関からの資金調達をしやすくなることもうれしい魅力です。
ベンチャーキャピタルから出資を受けると上記のようなメリットがある一方、以下のようなデメリットがある点にも注意が必要です。
注意したいデメリットのひとつが、ベンチャーキャピタルから出資を受けることで自社の持ち株が減少することです。金額が大きければ大きいほど持ち株比率が低下し、経営における発言権や議決権に影響が出る、IPOやM&Aなどのエグジットを達成できた際に得られる金額が減少するなどのデメリットがあります。
出資先企業の上場や飛躍的な成⾧がなければ、ベンチャーキャピタルが利益を得ることはできません。そのため、ベンチャーキャピタルは経営者に対して早期に結果を出すことを求めてくることも多く、経営を進めるうえで大きなプレッシャーがのしかかります。
ちなみに、経営計画がうまくいかず「利益を出すことは難しい」と判断された場合、ベンチャーキャピタルは支援をやめて撤退する可能性があります。株式も買い取り請求されるため、企業にとっては資金繰りやビジネスの継続に大きな痛手となるでしょう。
ベンチャーキャピタルから資金調達したい場合は、以下の方法でコンタクトをとるケースが一般的です。
最もシンプルな方法は、ネット上で情報収集を行って直接コンタクトをとることです。多くのベンチャーキャピタルは公式サイト等に連絡先を掲載しているため、あらかじめ「自社のビジネスプランや資金調達の目的とマッチするか」を慎重に見極めたうえで直接連絡をとってみるとよいでしょう。
すでに出資を受けている知人や取引先から紹介してもらう方法もあります。特に著名なベンチャーキャピタルの場合は直接連絡をしても取り合ってもらえない傾向がありますが、紹介であればスムーズにコンタクトをとれる可能性が高いです。
ただし、紹介してもらえたからといって100%出資を受けられるとは限りません。出資の魅力を感じてもらえるよう、しっかりと準備を行ってプレゼンや交渉に臨むことが大切です。
起業家を対象としたイベントを定期的に主催しているベンチャーキャピタルも多く、そういったイベントに参加することもおすすめの探し方です。ベンチャーキャピタル側としてもイベントを通じて良い条件の投資先企業を探しているため、うまくアピールできれば出資を検討してもらえる可能性があります。
商工会議所や中小機構では、出資先を探しているベンチャー企業やスタートアップ企業等を対象としてベンチャーキャピタルを紹介する支援事業を行っています。双方のニーズをもとにマッチングを行ってくれるため、自力で探すよりも効率的に自社のビジネスモデルや資金調達の目的に合うベンチャーキャピタルを見つけられるでしょう。
これから起業し、ベンチャーキャピタルから資金調達することを検討している方のなかには、「なるべく費用を抑えて事業活動を行いたい」とお考えの場合も多いでしょう。そんな方におすすめしたいサービスが「バーチャルオフィス」で、法人登記時に必要な事業用の住所をリーズナブルに利用できます。
ここではバーチャルオフィスを利用する主なメリットを5つ挙げ、それぞれの魅力について詳しくご紹介します。
創業時にバーチャルオフィスを利用する最大のメリットといえるのが、少ない費用負担でビジネスの基盤を整えられることです。バーチャルオフィスは一般的に5,000円~10,000円程度の登録料と月額数千円程度の利用料といったリーズナブルな価格で利用できることが多く、賃貸オフィスを借りる場合に比べて大幅なコストカットが叶います。
個人で事業を行う場合など「自宅兼オフィス」で事業活動を行う場合に、自宅の住所を本店所在地として登記申請することを検討している方もいるかもしれません。しかし、登記時に申請した住所は「公開情報」として国税庁の法人番号公表サイトに記載されてしまうため、自宅の住所が不特定多数の方に知られてしまう点に注意が必要です。
バーチャルオフィスを利用すれば自宅住所を申請する必要がなくなり、自宅のプライバシーをしっかりと保護できます。また、賃貸物件にお住まいの場合はそもそも自宅住所での登記ができないことが多いため、そういった点においてもバーチャルオフィスの存在は大変重宝します。
都心に拠点を持つバーチャルオフィスを利用すれば、ネームバリューの高い住所で登記申請できることも大きなメリットです。銀座や青山、新宿などの一等地に本店所在地があると取引先からの信頼を得やすく、たとえ実績が少なくても優位な立ち位置でビジネス活動を進められる可能性があります。
バーチャルオフィスによっては、会議室などの物理的なスペースを一時的に貸し出しているところも存在します。オプション料金が発生するものの、1時間につき500円~1,000円ほどのリーズナブルな価格で利用できるケースが多く、特に「自宅兼オフィス」で活動していいて自宅で打ち合わせを行いたくない方にとって非常に便利なサービスです。
バーチャルオフィスのなかには「法人設立サポート」など創業時の支援を行っているところもあり、そういったオプションサービスを活用すれば起業準備をスムーズに進められます。自力での起業や事業運営に不安を感じる場合は、サポートサービスが充実しているバーチャルオフィスを選ぶとよいでしょう。
ベンチャーキャピタルとは「将来的に成⾧を見込めるベンチャー企業やスタートアップ企業を対象として出資を行う投資会社」のことで、出資によって株式を取得し、上場やM&Aなどの際に出資時よりも高値で株を売却して利益を得ることを目的としています。
融資ではないため返済の義務がなく、実績がなくても多額の資金を調達しやすいなどのメリットがありますが、その反面、持ち株比率が低下して経営権に影響が出る、早期に結果を出すプレッシャーがあるなどのデメリットもある点に注意が必要です。これらの特徴をしっかりと踏まえたうえで、ベンチャーキャピタルによる資金調達法が自社に適しているかどうかを慎重に検討するとよいでしょう。
もし少ない資金での創業を検討している場合は、ぜひバーチャルオフィスの活用も視野に入れてみてください。自社に合った方法で資金調達を行い、その貴重な資金を上手にやりくりしながら事業運営を行うことが、事業成功の大きなカギとなるでしょう。