ビジネス用の住所や電話番号を手軽に借りられることから、起業家やスタートアッ
プ企業などから人気を集める「バーチャルオフィス」。コストを抑えて事業用拠点
を設けられる大変便利なサービスですが、利用するにあたって「バーチャルオフィ
スの住所に届いた郵送物はどうなるのか」「直接受取に行くこともできる?」と
いった疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回はバーチャルオフィスに到着する郵送物に焦点を当て、郵送物の種類
や転送依頼時・受取時の注意点について詳しくまとめました。また、不要な郵送物
の処理方法や、運営会社を選ぶ際に注目したいポイントもあわせてご紹介します。
まずは、バーチャルオフィスにどのような郵送物が届くのか事前に把握しておくた めに、法人を設立した場合に届くことが想定される書類の種類を押さえておきま しょう。
法人登記を行うと、登記完了から1週間程度で「法人番号指定通知書」が届きます。 この書類は国税庁⾧官が法人に対して法人番号を指定・通知する書類で、法人番号 は13桁の数字で構成されます。
法人登記後に税務署等に対して会社設立の届出手続きを行うと、税務署から源泉所 得税関係の書類が届きます。源泉所得税の納付書も同封されており、この納付書を 用いて所定の時期に所得税を納付することになります。
法人登記完了日から社会保険(厚生年金保険・健康保険)加入まで一定の期間が経
過すると、日本年金機構から「厚生年金保険・健康保険の加入状況にかかる調査
票」が届く場合もあります。法人の場合はたとえ経営者1名のみであっても厚生年
金保険・健康保険に加入する義務があり、この調査票は社会保険の手続きが済んで
いないことを確認・催促する目的の書類です。
どちらの保険も実際に働き始めた日以降に加入手続きを行えるようになるため、事
業を開始したら速やかに申請する必要があります。
社会保険料納付に関して口座振替手続きが行われていない場合、毎月20日頃に日本
年金機構から「社会保険料納入告知書」が送付されます。この場合、その都度コン
ビニや銀行等で支払う手間がかかるため、面倒な場合は自動引落しとなる口座振替
に切り替えるとよいでしょう。
なお、口座振替申請書類は社会保険料納入告知書に同封されていることが多いです。
会社設立後は、税理士事務所からのDMも集中しやすい印象です。登記先住所は公 開情報に指定されており、国税庁の「法人番号登録サイト」等で気軽に閲覧できる ため、そこから情報を得て営業のDMを送付する税理士事務所が多くみられます。
住民税の特別徴収とは、会社が従業員の給料から毎月住民税を天引きし、従業員が 住む市区町村へ納入する制度のことです。毎年4~5月頃に関係書類が届き、そこに は給与から徴収する住民税額が記載されています。
労働保険料申告書とは、労働保険の保険料を申告するための書類です。毎年5~6月 頃に厚生労働省労働局から書類が届くため、前年度に概算納付した保険料と確定保 険料の差額を精算し、新年度の概算保険料を計算して納付する必要があります。
算定基礎届とは、従業員の社会保険料の等級を算出し直すための書類です。毎年5 ~6月頃に算定基礎届が同封された封筒が届くため、4~6月の従業員の報酬金額を もとにその年の9月~1年間の社会保険料の基礎となる「標準報酬月額」を算出し、 日本年金機構へ提出します。
毎年10月頃になると、税務署から年末調整関係の書類および申請方法が記載された パンフレットが届きます。案内に従って所定の時期に書類を作成し、申請手続きを 行う必要があります。
毎年10月上旬~11月上旬にかけて、日本年金機構から「健康保険被扶養者状況リス ト」が送付されます。このリストをもとに、被扶養者となっている方が健康保険被 扶養者要件を満たしているかどうかを被保険者(労働者)に対して確認することが 必要です。
給与支払報告書は、会社が従業員へ支払った給与等の金額について従業員が居住す る市区町村へ報告するための書類です。毎年12月頃に書関係書類が届くため、従業 員の年間の給与所得を記入のうえで管轄の市区町村に提出します。
償却資産税申告書は、個人や法人が所有する償却資産について地方自治体が適切に
固定資産税を計算できるよう、所有者自らが償却資産を申告するための書類です。
償却資産とは、土地・建物・車両等以外の事業用の資産で、原則として10万円以上
のものが申告の対象となっています。
なお、書類は毎年12~1月頃に市区町村から届き、1月31日までに申告する必要があ
ります。
法人税申告書とは、法人が法人税の確定申告のために税務署へ提出する書類です。 時期としては決算月(法人ごとに異なる)の翌月に、税務署・都道府県・市町村の 3か所それぞれから郵送物が届きます。
賞与支払届は、賞与を支給した際の社会保険料の納付に必要な書類で、賞与支払い
予定月の前月に日本年金機構から送付されます。企業と従業員で社会保険料を折半
するため、企業は従業員の賞与から天引きして社会保険料を支払う仕組みです。
なお、賞与支払届は従業員に賞与を支給した日から原則として5日以内に日本年金
機構へ提出しなければなりません。申請内容によって賞与の保険料額が決定される
ほか、被保険者が受給する年金額にも大きく関わるため、忘れずに行う必要があり
ます。
・取引先からの請求書
・法人口座開設関係の書類 など
前述のように、法人を設立すると多種多様な郵送物が登記先住所宛に届きます。つ
まり、バーチャルオフィスの住所で登記を行った場合、郵送物はバーチャルオフィ
スの住所に到着するため、「自宅等へ転送する」あるいは「バーチャルオフィスの
住所へ受け取りに行く」のいずれかの方法での対応が必要です。
ここでは、両者のケースにおける注意点をそれぞれご紹介します。
まず確認したいポイントが、自宅等へ転送する際に送料や手数料がかかるかどうか
です。運営会社によっては送料が月額料金に含まれていることもありますが、一般
的には含まれておらず、別途転送費用がかかるケースが多くみられます。
また、転送を手配する事務手数料として1配送につき400円~500円ほどが上乗せさ
れる場合も少なくありません。転送の頻度によっては料金がかさんで経営が圧迫さ
れる可能性もあるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
特に宅配便の場合は高額な送料がかかることから、宅配便が頻繁に届く予定の会社
は転送時の送料が月額料金に含まれているバーチャルオフィスを選ぶことをおすす
めします。
書留郵便が到着した場合の取り扱い方法は、バーチャルオフィスの運営会社によっ て大きく異なります。場合によっては受取手数料が発生することもあるため、あら かじめ確認しておくとよいでしょう。
バーチャルオフィスによっては、郵送物を窓口で直接引き取れるサービスを行って いるところもあります。近くで用事がある場合やすぐに確認したい場合などにおす すめの方法ですが、運営会社によっては直接の引き取りに対応していないこともあ るため注意しましょう。
DMなどの不要な郵送物を処理してもらえるかどうかも事前にチェックしておくこ
とが大切です。その際は、ひとつひとつの書類に対して不要かどうかを申告する必
要があるのか、それとも受け取らないまま一定期間を経過すると自動的に廃棄され
るのかなども確認しておきましょう。
また、書類には大切な個人情報を含むため、具体的な処分方法についてもきちんと
把握しておく必要があります。溶解処理を徹底して行っているなど、丁寧に対応し
ている運営会社を選ぶと安心です。
ここでは、バーチャルオフィスを選ぶ際に注目したいポイントについて「郵送 物への対応」といった視点で2点ご紹介します。
まず意識したいのが、どのような郵送物が到着するかボリュームを予測したう えでバーチャルオフィスを選ぶことです。そのうえで、月額料金に送料や手数 料などが含まれていない場合は想定した荷物のボリュームからかかる送料・手 数料を算出し、無理なく利用できるかどうか慎重に検討しましょう。
もし直接引き取りにいくことも検討しているなら、居住地域とバーチャルオ
フィスの拠点があるエリアとの距離を確認することも大切です。たとえば都心
から遠く離れた地方在住の方が東京都内のバーチャルオフィスを利用する場合、
直接の引き取りは非常に難しくなります。
どうしても直接受け取りたい場合は居住地域近くに拠点を構えるバーチャルオ
フィスを利用するか、送料や手数料込みの運営会社を選択するとよいでしょう。
法人を設立するとさまざまな種類の書類が届き、ほとんどのバーチャルオフィスでは自宅等への転送サービスを実施しています。ただし、転送時の送料・手数料が別途かかるかどうかは運営会社によって異なるため、事前にしっかりと確認したうえでバーチャルオフィスを選びましょう。
また、不要な郵送物の取り扱い方法についてもあらかじめ把握しておくことをおすすめします。ぜひ郵送物への対応が丁寧で、コストを抑えて利用できる運営会社を選んでみてください。