会社を設立する際、「自宅マンションの住所で登記を行いたい」とお考えの方もい
るのではないでしょうか。
“自宅=オフィス”として自宅の住所を本店所在地にすればオフィスを設ける必要が
なく、コストを抑えた開業が可能です。しかし、自宅の住所での登記申請にはさま
ざまなリスクがあり、場合によっては大きなトラブルへ発展する恐れもあります。
そこで、今回は「自宅マンションの住所での登記申請」をテーマに、賃貸と分譲、
そして両者に共通するリスクについてまとめました。また、低コストで登記可能な
住所をレンタルできる「バーチャルオフィス」のメリットもあわせてご紹介します。
自宅のマンションの住所で登記できるかどうか気になっている方や、自宅での起業
を目指していて登記先住所にお悩みの方など、ぜひ参考にしてみてください。
まずは、賃貸マンションの住所で登記するとどのようなリスクがあるのか押さえて
おきましょう。
自宅が賃貸マンションの場合は、賃貸借契約書に「居住用として利用」や「事業用
途は不可」などの文言が含まれていることが多いです。それにもかかわらず事業用
の住所として登記申請すると、賃貸借契約書違反となってしまう可能性があります。
また、居住用の賃貸物件を事業用として利用することは、税金面にも大きな問題が
あることを認識しておきましょう。居住用賃貸物件であれば家賃は非課税ですが、
事業用賃貸物件は家賃にも消費税がかかるため、もし自宅マンションの住所をビジ
ネス利用するなら相当額の税金を支払わなければなりません。
つまり、居住用にもかかわらず登記先住所として使用し、ビジネス活動を行ってし
まうと、その期間中オーナーは脱税していることになってしまいます。このように
契約面や税金面におけるリスクが大きいことから、居住用賃貸マンションの住所を
事業用として利用することは大変危険といえます。
なかには「オーナーに内緒で申請し、バレないように気をつければ大丈夫だろう」
と考える方もいるかもしれません。確かに登記先住所として利用したことが発覚す
るかどうかはケースバイケースですが、もしそのことが明るみになった場合は賃貸
借契約が解除される恐れがあります。
また、居住用物件を事業用に利用したことによってオーナーや周辺住民が何らかの
損害を被った場合、損害賠償請求を受ける可能性もあるため注意しましょう。
続いて、分譲マンションの住所を登記先住所とした場合の主なリスクを2つご紹介 します。
分譲マンションには、マンションの住人が快適に暮らせる環境を維持するための
ルールとして「管理規約」が定められています。この管理規約に「居住用物件であ
り、ほかの用途での利用は不可」といった文言が含まれる場合は、登記先住所とし
て勝手に使用すると管理規約違反になるため注意が必要です。
なお、発覚すればマンションの管理組合とトラブルになるほか、場合によっては退
去を迫られる可能性もあります。
住宅ローン減税は居住用の土地・建物のみを対象とした制度で、事業用の土地・建
物は対象外となっています。実際に住宅ローンの契約書類には「居住用でなくなっ
た場合には、期限の利益を喪失する」と記載されていることが多いです。
そのため、ローンの対象となっている建物で法人登記を行うと「事業用に転用され
た」と判断され、住宅ローン減税が受けられなくなるリスクが発生します。
自宅マンションの住所で登記した場合は、賃貸・分譲にかかわらず「自宅の住所が
不特定多数の人に知られてしまうリスク」もあります。登記先住所は公開情報に指
定されており、誰でも閲覧可能な情報であるためです。
具体的には、登記が完了した法人の情報は国税庁の「法人番号公表サイト」に必ず
掲載される仕組みで、会社名や住所などで検索すると詳細を確認できるようになっ
ています。掲載されても何ら問題ない可能性もありますが、場合によっては面識の
ない人が突然自宅を訪ねてきたり、自宅住所が悪用されたりするリスクがある点に
注意が必要です。
参考:国税庁 法人番号公表サイト
自宅マンションの住所で法人登記を行うことはリスクが大きいため、避けるほ
うが賢明です。そうなるとオフィスの拠点を別に設ける必要がありますが、
「賃貸オフィスは高額なコストがかかるから利用できない」とお困りの方も多
いでしょう。
そんな方にぜひおすすめしたいのが、ビジネス用の住所をお手頃価格で借りら
れる「バーチャルオフィス」です。主に下記のようなメリットがあり、特に自
宅兼オフィスでビジネス活動を行いたい方、なるべくコストを抑えて起業した
い方などから人気を集めています。
・ネームバリューの高い住所が手軽に手に入る
・コストを抑えてスピーディーに起業できる
・自宅のプライバシーを保護できる
・起業準備をサポートしてもらえる場合もある
上記の具体的な魅力について、以下で詳しく見ていきましょう。
渋谷や新宿、銀座といった都心一等地に拠点を構えるバーチャルオフィスが多 く、有名エリアで手軽にビジネス拠点を設けられることは大きな利点です。そ ういった一等地の住所を利用できると会社のブランディングにつながり、ビジ ネス活動を優位に進められる可能性があります。
バーチャルオフィスの費用は、たとえ都心の拠点であっても非常に安価です。
一般的には契約時に支払う登録料が5,000円~10,000円ほど、月々の利用料も数
千円ほどで、賃貸オフィスよりも大幅にコストを抑えられます。
また、スピーディーに利用できることもバーチャルオフィスの魅力です。運営
会社の選定から契約まですべてオンライン上で完結でき、特に問題なければ申
込み後1週間ほどで利用を開始できます。
賃貸オフィスなら早くて数週間程度、場合によっては数か月程度の期間を要す
るため、「なるべく早く登記を行ってビジネス活動をスタートしたい」とお考
えの方にもおすすめのサービスです。
バーチャルオフィスを利用すれば、自宅の住所とビジネス用の住所を完全に分 けることができ、先述のようなリスクを不安視する必要はありません。自宅の プライバシーをしっかりと保護しながら、安全な環境下で事業活動に集中でき ます。
バーチャルオフィスのサービス内容は運営会社ごとに異なり、なかには起業準 備のサポートサービスを提供しているところもあります。不備なく効率的に起 業を目指したい方は、ぜひそういったサービスが整備されているバーチャルオ フィスを選ぶとよいでしょう。
自宅マンションが「居住用」にもかかわらず法人登記時に使用した場合、賃貸
物件であれば賃貸借契約書違反、分譲物件であれば管理規約違反や住宅ローン
違反となる可能性があります。また、どちらにおいても自宅のプライバシーが
脅かされるリスクがあるため、たとえ「事業用にも利用可」とされているマン
ションであっても自宅の住所で登記を行うことは避けるほうがよいでしょう。
ぜひ低コストで登記可能な住所を借りられるバーチャルオフィスを利用し、自
宅のプライバシー保護に配慮した安全な事業活動を目指してはいかがでしょう
か。