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外国人でも日本で特許・商標を取得できる?

グローバル化が進む現代において、外国人経営者が日本市場での事業展開を目指すケースが増加傾向にあります。なかには日本の特許や商標登録に興味を持つ方も少なくありませんが、外国人の特許・商標登録に関しては細かなルールがあるため、事前にしっかりと確認したうえで検討することが大切です。

そこで、今回は外国人の方が日本で特許・商標登録を受ける際の条件や注意事項などを詳しくまとめました。また、日本のビジネス拠点をお探しの方にぜひおすすめしたい「バーチャルオフィス」の魅力についても併せて解説します。

外国人が日本の特許・商標登録を受けられるケースとは

特許法や相互主義、関連条約に基づき、外国籍の方が日本で特許・商標登録を受けられるケースは以下の3つです。

1.日本国内に拠点があるケース
・日本国内に住所または一時的な住まいがある場合
・外国企業が日本国内に営業所を設けている場合

2.条約で認められるケース
・自国が日本との二国間協定を結んでいる場合
・自国がパリ条約(知的財産の保護に関する国際協定)やTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)に加盟している場合

3.相互主義で認められるケース
・自国が日本に対し、同一条件にて特許・商標登録などの権利を認めている場合・自国が「日本国がその国民に対し産業財産権に関する権利の享有を認める場合には、日本国民に対しその国民と同一の条件によって産業財産権に関する権利の享有を認める」としている場合

これらの要件に該当する外国籍の方は、日本の特許庁において特許出願や商標登録を行うことが可能です。ほとんどのケースでは上記の1または2に当てはまるため、まずは1または2に該当するかどうかを確認するとよいでしょう。

外国人が特許・商標にあたって条約の加盟国を確認する方法

次に、先述した「条約で認められるケース」に記載した「パリ条約」と「TRIPS協定」について、自国が加盟国かどうか確認する方法をご紹介します。

■「パリ条約」の加盟国かどうか確認する方法

パリ条約では、加盟国において特許や商標権の出願時に優先権を主張することができる制度を提供しています。自国がパリ条約の加盟国であるかどうかは、以下のいずれかの方法で確認するとよいでしょう。

・世界知的所有権機関(WIPO)の公式サイトをチェックする
WIPOの公式サイトには、パリ条約に加盟している国のリストが掲載されています。情報は常にアップデートされているため、最も信頼性が高い確認方法といえるでしょう。

参考:WIPO-Administered Treaties(英語)

・自国の特許庁の公式サイトで確認する
各国における特許庁のサイトでも、自国がパリ条約に加盟しているかの情報を確認できます。

・特許や商標に関する専門書や資料を閲覧する
たとえば国際特許法に関する書籍や論文など、特許や商標に関連する専門書や資料をチェックする方法も有効です。図書館で調べたり、商業データベースにアクセスしたりして確認するとよいでしょう。

・弁理士や法律事務所に相談する
特許・商標に精通した弁理士や、知的財産に特化した法律事務所に相談するのもひとつの方法です。加盟国に関する情報を得られるだけでなく、特許や商標に関する具体的なアドバイスも得られます。

■「TRIPS協定」の加盟国かどうか確認する方法

TRIPS協定はWTO(世界貿易機関)の一部であり、加盟国における知的財産権の保護に関する最低基準を定めています。加盟国は特許・商標などの知的財産権を扱う際、その規定に従う必要があるため、自国が加盟国かどうかを以下の方法で調べてみるとよいでしょう。

・WTOの公式サイトをチェックする
WTOはTRIPS協定の加盟国リストを公式サイト上で公表しており、最新の情報を確認できます。

参考:Amendment of the TRIPS Agreement(英語)

・自国の特許庁に問い合わせる
多くの国の特許庁では、自国がTRIPS協定の加盟国かどうかの情報を提供しています。

・国際知的財産機関や弁理士に相談する
専門家に相談することで、最新の情報を得られる可能性が高まります。相談する際は、特許や商標の出願がビジネスにどのような影響を与えるのか併せて確認しておくことをおすすめします。

外国人が日本の商標に出願手続きする際の注意点

続いて、外国人が日本の商標に出願する際の注意点についても把握しておきましょう。

出願前にまず確認しておきたいのが、商標名やロゴが「日本国内でどのような印象を持たれるか」についてです。商標が日本語でネガティブな意味を持つ場合、商品のイメージやブランド全体に悪影響を及ぼす可能性があるため、あらかじめしっかりと調べてから申請する必要があります。

また、出願人の名前が日本の出願ソフトに対応していない文字(特殊文字や特定の言語の文字など)を使用している場合、代替文字での出願が求められます。さらに、住所にアルファベットなどの欧文文字を使用することはできないため、海外の住所を記載する際はすべてカタカナに変換して出願することが重要です。なお、ケース別の注意点については以下をご確認ください。

■日本国内に住所や居所がある場合

出願する外国人自身が日本に住所や居所を持っている場合には、手続きにあたって特別な代理人を設ける必要はなく、本人が直接特許庁に出願書類を提出することが可能です。その際、出願書類には所有している日本の住所や居所を記載できます。

■日本国内に住所や居所はなく、法人の営業所がある場合

日本に法人の営業所を持っている場合も、出願する外国人自身が特許庁で手続きできます。出願書類に「営業所」の欄を設け、そこに日本国内の営業所の所在地を記載しましょう。

■日本国内に住所・居所・営業所がない場合

日本国内に住所・居所・営業所がない場合は、出願する外国人自らが商標登録の手続きを行うことができず、日本国内に住所または居所を有する代理人を通じて申請する必要があります。このとき、特許庁に対して代理人の選任手続きを行い、代理人に関する正確な情報を提供する必要があることから、信頼できる法律事務所や特許事務所、弁理士などに出願を依頼するとよいでしょう。

■自国がパリ条約やTRIPS協定などの加盟国である場合

自国がパリ条約やTRIPS協定などの加盟国である場合は、出願する外国人自身が特許庁で手続きを行うことが可能です。出願書類の「住所又は居所」の欄に自国内の住所・居所を記載すれば問題ありません。

もし加盟国内に住所・居所ではなく営業所がある場合は、出願書類に「営業所」の欄を作成し、そこに該当住所を記載します。ただし、出願人名のみの情報では法人かどうか判断しづらい場合は「法人の法的性質」の欄も作成し、「〇〇国の法律に基づく法人」と記載する必要があります。

■自国と日本との間に関連条約がない場合

自国がパリ条約やTRIPS協定といった関連条約の加盟国ではない場合は、自国と日本の間で相互主義を取っていることを証明する書類を提出する必要があります。その書類は自国の知的財産権制度が日本の制度と同等であることを示すためのものであり、具体的には以下のような書類が有効です。

・特許証明書(自国で取得した特許の詳細を記載した証明書)
・自国の知的財産権に関する法律や規制を示す書類
・専門家や弁護士からの意見書(自国の制度と日本の制度との相似点を解説したもの)

日本でのビジネス拠点は「バーチャルオフィス」がおすすめ

外国人が特許・商標登録にあたって日本のビジネス拠点を探している場合は、ぜひバーチャルオフィスを活用するとよいでしょう。バーチャルオフィスとは、物理的な空間ではなく住所・電話番号といった基本情報のみをレンタルできるサービスで、以下のようなメリットを得られます。

【バーチャルオフィスを利用するメリットその1】オフィスコストを大幅に削減できる

バーチャルオフィスの利用にあたってかかる費用は、物理的なオフィスを持つ場合に比べて圧倒的に低コストです。契約時に支払う登録料は5,000円~10,000円程度、利用料は毎月数千円ほどであるため、初期費用・維持費ともに大幅な削減が叶います。

【バーチャルオフィスを利用するメリットその2】日本の有名住所に拠点を設けられる

バーチャルオフィスは銀座や渋谷、新宿といった主要なビジネスエリアに集中しており、有名な住所にビジネス拠点を設けられることも大きな魅力です。

ネームバリューの高い住所に拠点があると、顧客やビジネスパートナーに対して信頼感を与える効果も期待でき、日本での開拓をスムーズに進められます。

【バーチャルオフィスを利用するメリットその3】法人設立手続きをサポートしてもらえる場合もある

バーチャルオフィスの運営会社によっては、法人設立手続きの代行といった各種サポートサービスを提供している場合もあります。特に初めて日本進出を検討している海外企業にとって心強い支援となるでしょう。

まとめ

外国籍の方でも、日本国内に拠点がある場合や、条約や相互主義によって認められている場合は日本で特許や商標を取得することが可能です。商標の出願書類の書き方や、代理人の必要可否については細かな規定があるため、今回ご紹介した内容を参考にしっかりと準備・手配しておきましょう。

もし日本でのビジネス拠点をお探しなら、コストを抑えながらもネームバリューの高い住所をレンタルできる「バーチャルオフィス」の利用がおすすめです。ぜひそういった手軽かつ効率的なサービスを活用しながら、日本でのビジネスの成功に向けた大きな一歩を踏み出してはいかがでしょうか。

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