飼い主の自宅に出向いてペットのお世話を代行する「ペットシッター業」。
生活環境が大きく変わるペットホテルに比べてペットにストレスがかかりにくい
ことから、近年急速に需要が高まりつつある職業です。
特に自宅を拠点にして開業するケースが増えてきていますが、自宅住所が公開さ
れることを懸念する方が多く、事務所用の住所をレンタルできる「バーチャルオ
フィス」に注目が集まっています。
しかし、バーチャルオフィスによってはペットシッター業の許認可が下りない場
合もあるため注意が必要です。
まずはペットシッター業の開業にあたって必要な申請内容についてしっかりと把
握し、「どのようなバーチャルオフィスであれば申請できるのか」を認識したう
えで開業手続きを進めることをおすすめします。
そこで、今回は自宅を拠点にペットシッター業を開業したいとお考えの方に向け
て、まずは新規で申請する場合に必要な書類や手数料、手続きの流れなどをまと
めました。
さらには、ペットシッター業の申請先住所として利用可能なバーチャルオフィス
の特徴や、バーチャルオフィスを利用して開業するメリットについても詳しく解
説します。
まずは、ペットシッター業を新規で申請する場合に必要な書類について押さ
えておきましょう。
ペットシッター業は動物を取り扱う職業のため、動物取扱業の「第一種動物
取扱業者」としての登録が法律や条例によって定められています。動物取扱
業は業種によって7つの種別に分けられており、ペットシッター業の場合は
「保管」の種別での申請が必要です。
「保管」の中でも動物の飼養施設を持たない運営スタイルであることから、
以下の3つの書類のみで開業申請を行えます。
・第一種動物取扱業登録申請書
・権原を証明する書類(第一種動物取扱業の事業の実施に係る場所使用承諾
証明書)
・動物愛護管理法第12条第1項1号から第6号までに該当しないことを示す書類
それぞれどのような書類なのか、概要や注意点について詳しく解説していき
ます。
第一種動物取扱業の登録申請を行うための書類で、事業所の名称や所在地、
責任者の氏名、業務内容といった記入欄が設けられています。記入時の注意
点は以下の通りです。
・5-(1)「業務の具体的内容」欄:ペットシッター(出張)と記入
・6「主として取り扱う動物の種類及び数」欄:ペットシッターの場合は「1
日の最大取扱い頭数を記入」
・10「事務所以外の場所において重要事項の説明等をする職員」欄:氏名・
資格要件等を記入
・11「事務所ごとに配置される重要事項の説明をする職員」欄:記入不要
なお、個人ではなく法人として申請する場合は、添付書類として「登記事項
証明書」、および役員の住所氏名が記載されている書類の提示も必要となる
ため注意しましょう。
この書類は自分の所有している場所、あるいは賃借している住居を「第一種
動物取扱業のための事務所や飼養施設として使用することを管理者(大家さ
んや管理会社)から承諾を得ている」ことを証明するための書類です。
開業の拠点となる物件の管理者に依頼をして書類を発行してもらう必要があ
りますが、一般的な賃貸物件の場合は「自宅以外の使用はNG」としている
ケースが多いため注意しましょう。
もしも許可が下りない場合は、第一種動物取扱業の事業所として申請可能な
場所を見つけることから始めなければなりません。
欠格事項に該当しない(動物愛護法や狂犬病予防法等に違反していない、ま
た過去の違反から2年以上経過している)ことを証明する書類です。書類の
「□申請者」と「□動物取扱責任者」の□にチェックを入れ、住所・氏名・
電話番号を記入のうえ捺印をすれば完成となります。
なお、法人の場合は、「□当該法人の役員」にもチェックが必要です。
ペットシッター業の開業に必要な「保管」の種別で申請する場合、15,000円の手
数料がかかります。
ちなみにペットのお世話だけでなくしつけやトレーニングのサービスも行いたい
場合は、「保管」だけでなく「訓練」の種別の申請も必要です。基本的には1種
別につき15,000円の手数料が発生しますが、複数の種別を同時に申請する場合は
以下のように割安となります。
・ 2種別同時申請:計25,000円
・ 3種別同時申請:計35,000円
・ 4種別同時申請:計45,000円
・ 5種別同時申請:計55,000円
続いて、ペットシッター業を申請するにあたって押さえておきたい注意点を解説 します。
第一種動物取扱業の登録申請にあたり、「動物取扱責任者」を1名選定する必要
があります。個人で開業する場合は開業者自身が「動物取扱責任者」であること
が求められ、その資格を得るためには以下の要件をすべて満たさなければなりま
せん。
・開業予定の業種における半年以上の実務経験(勤務先の在籍証明や勤務歴を証
明する書類の提示が必要)
・開業業種に関する教育機関に1年以上在籍し、卒業していること(卒業を証明
する書類の提示が必要)
・要件として認められている資格を取得していること(資格証などの提示が必
要)
第一種動物取扱業の登録は、5年ごとに更新する必要があります。失効となる2ヶ
月前から更新手続きが可能なので、忘れずに申請することが大切です。
※更新登録の際には1件につき7,540円の手数料が発生します。
第一種動物取扱業者として営業するにあたり、各自治体の定める「動物取扱業責 任者研修」へ年に1度以上参加することが義務付けられています。詳細は管轄の 自治体からの案内をご確認ください。
開業にあたって広告を出すなど宣伝活動を行う際には、登録番号等を記載する義 務があります。詳細は管轄の自治体からの案内をご確認ください。
ペットシッター業を新規申請する場合は、以下の流れで手続きを進めます。
先述した必要書類を参考にすべての提出書類を準備し、不備がないか確認します。
書類を動物愛護相談センターの窓口にて提出し、手数料を支払います。
審査結果を待ちます。
登録証が交付されます。
このタイミングで営業活動を開始できます。
管轄の自治体からの案内に従って研修を受講します。
先述のように、ペットシッター業を行うにあたっては「第一種動物取扱業の事
業所として申請可能な住所」を申請する必要があります。自宅住所で申請でき
ない場合にバーチャルオフィスの利用を検討している方もいるかもしれません
が、実は一般的なバーチャルオフィスでは申請が下りないことがほとんどです。
というのも、一般的なバーチャルオフィスの場合は運営会社が建物のオーナー
から建物をまるごと、あるいはフロアや1室などの一部を賃貸契約で借りてお
り、その住所をバーチャルオフィスとして会員に貸し出しています。つまり、
運営会社はバーチャルオフィスのオーナーではないため、第一種動物取扱業の
事業所用に住所を使用してもよいかどうかの許諾を行うことができません。
しかし、自社所有運営のバーチャルオフィスであれば、「運営会社=建物の
オーナー」であることから使用承諾書の発行が可能です。そのため、ペット
シッター業の申請先住所としてバーチャルオフィスの利用を検討している方は、
「自社所有運営かどうか」に注目して運営会社を選ぶとよいでしょう。
最後に、ペットシッター業の申請時にバーチャルオフィスを利用する主なメ リットについてまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
バーチャルオフィスを利用する最も大きなメリットといえるのが、固定費を抑
えられることです。
自宅住所で申請できない場合は「第一種動物取扱業の事業所として申請可能な
場所」を探して開業する必要がありますが、賃貸物件をレンタルする際には敷
金・礼金といった初期費用がかかります。また、毎月の家賃や光熱費などのラ
ンニングコストも発生するため、特に個人での開業をお考えの場合は「負担が
大きい」と感じやすいかもしれません。
しかし、バーチャルオフィスであれば基本的には「登録料」と「月額利用料」のみで利用することが可能です。たとえば都内の拠点における月額利用料の相場は4,000円~5,000円程度となっており、同じエリアで賃貸物件をレンタルするよりも大幅にコストカットできます。
セキュリティ対策になることも、バーチャルオフィスならではの魅力のひとつ
です。
お住まいの物件の状況によっては「第一種動物取扱業の事業所」として自宅の
住所を使用可能なケースもありますが、その場合は自宅の住所が公開されてし
まう大きなデメリットがあります。
住所が公開されることにより、何かトラブルが発生した際などに突然人が自宅
を訪ねてきたり、自分の住所がどこかで勝手に利用されたりといったことが起
こり得ることを覚悟しておかなければなりません。
その点バーチャルオフィスの住所を利用すれば自宅の住所を公開する必要がな
く、セキュリティ関連のリスクを恐れずに開業できます。
自分だけでなく一緒に暮らす家族のプライバシーを守ることにも繋がり、安心
して運営を続けられるでしょう。
自宅を拠点にしてペットシッター業を運営するなら、「自社所有運営のバー
チャルオフィス」を利用することをおすすめします。
開業時に必要となる使用承諾書を発行してもらえることはもちろん、利用する
サービスによっては郵便物やFAXの管理といったオフィス機能も活用できて大
変便利です。
ぜひ「自社所有運営かどうか」に注目しながらバーチャルオフィスを選定して、
スムーズで安全なペットシッター事務所の開業を目指してみてください。