「女性向けの資金調達方法について知りたい」とお考えなら、国や地方自治体が提供している助成金や融資制度に注目してみてはいかがでしょうか。近年では女性の社会進出をサポートする取り組みが活発に行われており、女性起業家を対象としたさまざまな支援制度が設けられています。
そこで、今回は女性起業家向けの支援制度を5つ挙げ、それぞれの概要や利用条件などを詳しく解説します。さらには、自宅での開業を検討している方におすすめしたい「バーチャルオフィス」の魅力についてもまとめました。
ぜひ参考にしながら上手に資金調達を行って、スムーズな事業運営を目指しましょう。
近年、女性起業家の割合が増加傾向にあります。
日本政策金融公庫総合研究所が毎年実施している「新規開業実態調査」においても、その傾向が顕著に表れています。日本政策金融公庫の融資制度を受けた女性経営者の割合に注目してみると、1991年度では12.4%でしたが、2022年度は24.5%と約2倍に増加しました。
参考:日本政策金融公庫総合研究所「2022年度新規開業実態調査」
女性起業家が開業するジャンルとしては、飲食系や美容関連、介護・保育事業といったサービス業が人気です。サービス業においては女性ならではの配慮や着眼点などが強みになることも多く、活躍の場が増えていることが女性起業家増加における主な理由と考えられています。
また、女性向けの創業サポート制度が拡充されつつあることも大きく関係しています。資金調達が以前よりもしやすくなったことから、個人での起業や独立を目指す選択肢が身近になってきている印象です。
ここからは、女性起業家向けの支援制度について解説していきます。
まずご紹介するのは、国や地方自治体からの支援金制度である「助成金」です。
条件を満たせばどなたでも受給でき、基本的に返済の義務はありません。
ここでは、女性起業家へ特におすすめしたい「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」と「両立支援等助成金(育児休業等支援コース)」の2つの助成金制度について詳しくまとめました。
「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」とは、東京都内の商店街を拠点とした開業を検討している女性、あるいは若手男性に対し、店舗の新装・改装費用や設備導入費用、店舗賃借料といった経費の一部を助成する制度です。最大助成限度額は730万円で、たとえば事業所整備費においては最大400万円、店舗賃借料なら最大で月15万円まで助成を受けられます。
利用条件は以下をご確認ください。
・「女性」または「令和4年3月31日時点で39歳以下の男性」であること
・「創業予定の個人」または「個人事業主」であること(法人・法人代表者は申請対象外)
・申請予定店舗が「都内商店街」であること
・申請予定店舗の開業が「各回助成金交付決定日以降」であること(第1回:令和3年8月1日、第2回:令和4年1月1日)
・申請予定業種が「公社が定める業種(卸売業・小売業、不動産・物品賃貸業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス・娯楽業、教育・学習支援業、医療
・福祉、サービス業)」であること
・申請時点で「実店舗(一般消費者に対して商品やサービスを提供する場所、現物を手に取ることができる商店等)を持っていない」こと
女性起業家であれば年齢に関係なく申請できるため、都内の商店街で起業・開業等を考えている方はぜひ検討してみてください。
助成金の名称 | 若手・女性リーダー応援プログラム助成事業 |
助成限度額 | 730万円 |
助成対象期間 | 交付決定日から開業日の翌々月末(最⾧1年間) ※店舗賃借料は交付決定日から2年間 |
公式サイト | https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/wakatejosei.html |
「両立支援等助成金」とは厚生労働省が行っている支援金制度で、従業員の育児や介護との両立をしやすくする制度の導入や、女性の就業・活躍推進のための取り組みを行う事業者を支援する目的で運営されています。複数のコースがあるなかで、女性起業家へ特におすすめしたいのは「育児休業等支援コース」です。
社員が育児休暇を取得する際に最大96万円が国から支給される制度で、「育休復帰支援プラン」を策定および導入し、プランに沿って従業員の円滑な育児休業取得・復帰に取り組んだ場合に助成を受けられます。利用条件は以下をご確認ください。
・継続して3ヶ月以上の育児休暇を取得した労働者が在籍する中小企業
・育児休暇復帰後、継続して6ヶ月以上経過した労働者が在籍する中小企業
※中小企業の範囲
製造業:資本金3億円以下、または常時使用する従業員数が300人以下の企業
卸売業:資本金1億円以下、または常時使用する従業員数が100人以下の企業
小売業:資本金5千万円以下、または常時使用する従業員数が50人以下の企業
サービス業:資本金5千万円以下、または常時使用する従業員数が100人以下の企業
申請に必要な業務や作成すべき書類などは多々ありますが、社員が⾧期的に働きやすい職場環境づくりを目指せる魅力的な制度です。女性のワークライフバランスの推進を目指している女性起業家は、ぜひこの助成金制度を活用してみてはいかがでしょうか。
助成金の名称 | 両立支援等助成金(育児休業等支援コース) |
助成限度額 | 96万円 |
助成対象期間 | 休業取得時と職場復帰時の2回に分けて申請 休業取得時:育児休業開始日から3ヶ月後~2ヶ月以内 職場復帰時:職場復帰から6ヶ月後~2ヶ月以内 |
公式サイト | https://www.mhlw.go.jp/content/001059588.pdf |
次にご紹介するのは、女性起業家におすすめの融資です。各自治体や公的機関がさまざまな融資制度を実施しているなかで、ここでは特に注目したい「女性・若者・シニア創業サポート事業」「女性、若者/シニア起業家支援金」「新創業融資制度」の3つの制度について詳しく解説します。
「女性・若者・シニア創業サポート事業」は、東京都が女性や若者、シニアを対象に提供している融資制度です。信用金庫・信用組合・地域創業アドバイザーが連携して実施しており、低金利・無担保で融資を受けられるほか、アドバイザーによる経営サポートも利用できます。
利用条件は以下をご確認ください。
・『女性』あるいは『39歳以下または55歳以上の男性』で、都内で創業予定の方、または創業後5年未満の方
・東京都内に本店又は主たる事業所を置き、地域の雇用や需要を支える事業を行う場合
・個人事業主か中小企業で、大企業が実質的に経営を支配していない場合
・公序良俗に問題のある事業や風俗営業などでない場合
・現在かつ将来にわたって暴力団等反社会的勢力と関わらない場合
・租税についての未申告や滞納がない場合
「東京都内で創業すること」「創業から5年未満であること」といった細かな条件はありますが、女性起業家なら年齢に関係なく申し込めます。融資だけでなく経営上のアドバイスももらえる魅力的な制度なので、条件に当てはまる方はぜひ活用してみてください。
融資の名称 | 東京都女性・若者・シニア創業サポート事業 |
融資限度額 | 1,500万円 |
融資期間 | 10年間 |
返済据置期間 | 3年 |
金利の目安 | 1%以内 |
問い合わせ先 | 各取扱金融機関 |
公式サイト | https://cb-s.net/tokyosupport/ |
日本政策金融公庫が行う「女性、若者/シニア起業家支援資金」は、女性や35歳未満の若者、55歳以上のシニアの起業を支援する融資制度です。基本的には開業して7年以内の方を対象としており、条件に当てはまれば最大7,200万円(運転資金なら4,800万円)の融資を受けられます。
女性/ 35歳未満の方(若者)/55歳以上の方(シニア)のうち、新たに事業を始める方、あるいは事業開始後おおむね7年以内の方
●以下に該当する場合は優遇金利で融資を受けることが可能
・技術・ノウハウ等に新規性がみられる方(年利0.56~1.35%)
・地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方(年利0.56~1.35%)
・地方創生推進交付金を活用した「起業支援金」および「移住支援金」の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方(年利0.31~1.10%)
※土地取得資金は基準利率(年利1.21~2.00%)、年利はいずれも令和2年3月2日時点
担保や保証人については、日本政策金融公庫の担当者との相談によって決定されます。女性なら年齢制限なしで利用できるため、開業に向けた資金調達を希望する女性起業家の方はぜひチェックしてみてください。
融資の名称 | 女性、若者/シニア起業家支援金 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
融資期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
金利の目安 | 担保を提供する場合は、年利0.81~1.60%(土地取得資金は年利1.21~2.00%) ※令和2年3月2日時点 |
問い合わせ先 | 日本政策金融公庫 |
公式サイト | https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/02_zyoseikigyouka_m.html |
日本政策金融公庫が提供する「新創業融資制度」は、女性起業家や新たに事業を始めた方、今後起業する予定の方に対して無担保・無保証で融資を行う制度です。融資の限度額は3,000万円で、そのうち運転資金としては1,500万円が上限となっています。
利用条件については以下をご確認ください。
下記1・2の両方に該当する方
1. 新たに事業を始める方、あるいは事業開始後に税務申告を2期終えていない方
2. 創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方
※ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」や「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」などに該当する場合は、2の要件を満たすものとされます
担保や保証人を必要とせず、手元の資金や財産が少ない状態でも利用可能であることが大きな魅力です。ぜひ開業時の資金調達にお役立てください。
融資の名称 | 新創業融資制度 |
融資限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
融資期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
金利の目安 | 基準利率2,26% |
問い合わせ先 | 日本政策金融公庫 |
公式サイト | https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html |
これから開業を目指す女性起業家のなかには、「ひとまず自宅を拠点に事業活動を行いたい」とお考えの方もいることでしょう。自宅で開業すればより少ない資金で法人を設立できますが、自宅の住所を本店所在地として申請することはプライバシーの観点からおすすめではありません。
そこでご紹介したいのが、事業用の住所をレンタルできる「バーチャルオフィス」です。主に以下のようなメリットがあり、安全に、さらには費用を抑えて事業の基盤を設けられます。
まず注目したいメリットが、ご自身や家族のプライバシーを保護できることです。
本店所在地として申請した住所は「公開情報」に指定されており、国税庁の「法人番号公表サイト」等で誰でも閲覧可能な状態となります。そのため、自宅の住所で法人登記を行うとその住所が不特定多数の人に知られてしまい、ご自身が家族のプライバシーが脅かされるリスクがあります。
バーチャルオフィスの住所を本店所在地として登録すれば、自宅を拠点としていても自宅住所が公開されることはありません。より安全に事業活動を進められるため、ぜひ利用するとよいでしょう。
バーチャルオフィスの住所は事業用に適していることから、スムーズに法人登記を進められます。
実はマンションやアパートなどの賃貸物件の多くは、管理規約やオーナーの意向などによって「事業用としての使用は不可」といったルールが定められているため注意が必要です。もしもルールに反して法人登記を行ってしまうと管理組合やオーナーなどとトラブルになる可能性があり、場合によっては退去を命じられる恐れもあります。
バーチャルオフィスを利用すればそういったリスクを懸念する必要がなく、安全かつスムーズに法人登記を行えます。
バーチャルオフィスは、一般的に「数千円程度の登録料」と「月に5,000円~10,000円程度の利用料」で利用できます。オフィス用に賃貸物件を借りるよりも圧倒的にリーズナブルなので、自宅を拠点に事業活動を行うなどで物理的なスペースのレンタルを必要としない場合におすすめです。
バーチャルオフィスを運営している会社によっては、住所やFAX番号といったオフィス機能だけでなく「ミーティングスペース」を貸し出しているところも存在します。事業活動において対面での打ち合わせが想定される場合は、ミーティングスペースのレンタルを行っているバーチャルオフィスを利用するとよいでしょう。
近年において女性の活躍推進は国策のひとつであり、女性起業家をサポートする制度が年々増えてきています。今回ご紹介した以外にも女性向けの助成金・融資制度はたくさんあるため、ぜひご自身が居住している自治体や開業しようとしている地域の支援制度をチェックしてみてはいかがでしょうか。
また、自宅での開業を目指している女性起業家には、バーチャルオフィスを利用して法人登記を行うことをおすすめします。プライバシー上のリスクを回避しつつ費用を抑えて事業基盤を確保できるため、ぜひ活用してみてください。