起業する際に、「自宅住所を公開したくない」といった理由で私書箱やバーチャ
ルオフィスの利用を検討している方もいるのではないでしょうか。
どちらも自宅を拠点にビジネスを行う場合に大変便利なサービスです。しかし、
利用できる機能が大きく異なるため、両者の特徴をしっかりと把握したうえで活
用することが大切です。
そこで、今回は私書箱とバーチャルオフィスの特徴を解説しながら、料金や機能
面における違いについてまとめました。さらには、法人登記や郵送物管理など幅
広いシーンで大いに役立つバーチャルオフィスに焦点を当て、導入のメリットを
詳しくご紹介します。
自宅を拠点とした事業運営をお考えの方、私書箱とバーチャルオフィスのどちら
を利用しようかお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
私書箱とは、郵便物や宅配便を自分の代わりに受け取り、保管・転送してく れるサービスです。たとえば自宅を拠点に仕事をしていて、取引相手に自宅 住所を教えたくない方や、業務専用の宛先を設けたい方、大量の郵便物が届 く仕事をしている方などにおすすめです。
私書箱には、郵便局内に設置された「郵便私書箱」と、一般の業者が提供している「私設私書箱」の2種類があります。それぞれの違いは以下の通りです。
郵便私書箱は、日本郵便が提供する郵便局内にある私書箱を指します。無料で利
用でき、月額費用や受け取り時の費用などは一切かかりません。
ただし、利用するには下記3点の条件を満たす必要があります。
・6か月以上利用する予定がある
・ほぼ毎日、郵便物の配達がある
・郵便物をためずに定期的に受け取りに行ける
上記条件をすべて満たす場合は、私書箱が設置されている郵便局に空き状況を問
い合わせてみましょう。空きがあれば「郵便私書箱使用承認請求書」を身分証明
書とともに提出し、審査に通ると利用できるようになります。
私設私書箱は、日本郵便以外の業者が運営・管理している私書箱です。郵便私書
箱の空きが少ない、都市部を中心にサービスが提供されています。
このタイプの私書箱は利用料金が発生しますが、宅配便も受け取れる、指定した
住所まで転送してもらえるといった便利な機能を備えたケースが多いです。また、
利用時の条件が緩めのところが多く、気軽に利用できるメリットもあります。
郵便私書箱 | 私設私書箱 | |
料金 | 無料 | 有料 |
利用条件 | 期間や利用方法など条件あり | 利用開始時に事業者から本人確認 |
場所 | 郵便私書箱を有する郵便局 | 事業者が指定する住所 |
対応できるもの | 郵便・郵パックのみ | 郵便・郵パック・宅急便等 |
受け取り方 | 自分で取りに行く | 郵送・指定住所に取りに行く等 |
郵便私書箱は料金が無料である点が魅力的ですが、近所の郵便局が私書箱を 提供していない場合、あるいは提供していても空きがない場合は利用できな い点に注意しましょう。また、細かな利用条件もあるため、条件に当てはま らない場合は私設私書箱やその他の郵便物預かりサービス等を利用すること をおすすめします。
一方、バーチャルオフィスは事業運営に必要な住所や電話番号といった基本情
報をレンタルできるサービスのことです。
しかし、バーチャルオフィスの住所は法人登記時に「本店所在地」として利用
できます。そのため、自宅を拠点に事業活動を行うものの、ホームページや名
刺にはバーチャルオフィスの住所を記載するといった使い方が可能です。
また、運営会社によってはバーチャルオフィスの住所に届いた郵送物を指定の
住所に転送してもらえたり、ミーティングスペースを借りられたりするところ
も存在します。
ここでは、私書箱とバーチャルオフィスをさまざまな角度から比較してみました。
料金や機能面における細かな違いに注目してみましょう。
私書箱 | バーチャルオフィス | |
料金 | 月額数千円~ | 月額数千円~ |
ミーティングスペース | なし | ありが多い |
登記先としての利用可否 | 利用不可 | 利用可 |
信頼度 | 低 | 高 |
郵送物の管理 | あり | あり |
設立・移転サポート | なし | あるところもある |
私書箱とバーチャルオフィスは「自宅以外の場所に郵便物の届け先を設けられ
る」といった点で共通していますが、大きな違いは「登記先住所として利用で
きるかどうか」です。私書箱の住所は登記時に使用できないため、登記先住所
をレンタルする必要がない方に向いています。
一方で、バーチャルオフィスの住所であれば登記時に使用できるほか、会議室
のレンタルを行っているところを利用すれば打ち合わせスペースも確保できま
す。
そのため、「自宅を拠点に起業したい」とお考えの方に大変適したサービスで
す。
先述のように、バーチャルオフィスは自宅を拠点に法人を設立したい場合にお すすめのサービスです。ここでは、バーチャルオフィスを利用するメリットに ついて詳しくご紹介します。
バーチャルオフィスを利用する最大のメリットといえるのが、費用を抑えてビ ジネスの基盤作りができることです。一般的に「5,000円~10,000円程度の登録 料」と「数千円程度の月額料」で利用できる運営会社が多く、毎月数万円から 数十万円以上がかかるオフィスコストを大幅に削減できます。
先述のように、法人登記に適した住所を借りられることもバーチャルオフィス
を利用する大きな魅力です。
なかには自宅の住所を使用することを検討している方もいるかもしれませんが、
物件によっては管理会社やオーナーの意向で「事業用としての住所使用は不
可」としているところも多くみられます。そのルールを知らず、あるいは知っ
ていてもこっそり登記時に使用してしまうと、のちにトラブルに発展する恐れ
があるため注意しましょう。
バーチャルオフィスの住所は事業用としての使用に適していることから、そう
いったリスクを危惧することなくスムーズに登記申請を進められます。
物件によっては自宅の住所を法人登記に利用できる場合もありますが、プライ
バシーの観点から「自宅の住所は使用したくない」とお考えの方も多いのでは
ないでしょうか。法人登記の際に登録した住所は「公開情報」に指定されてお
り、国税庁の法人番号公表サイトなどで誰でも閲覧可能な状態となるため注意
が必要です。
一方、バーチャルオフィスの住所で法人登記を行えば、その住所が公開される
ことからプライバシーにしっかりと配慮できます。安全性の高い環境を整える
ことで、事業運営により一層集中しやすくなるでしょう。
会議室をレンタルしている運営会社を選べば、面談や打ち合わせ時にスペース を借りられます。なかには複数の拠点にて会議室を貸し出しているところもあ り、顧客の利便性を考慮ながら場所を選択できて大変便利です。
運営会社によっては、法人設立時のサポートサービスを提供している場合もあ ります。なかには士業に依頼するよりも費用を抑えて設立手続きを行えるとこ ろもあり、会社設立準備をリーズナブルに、スムーズに進めたい方に大変おす すめです。
私書箱は、自宅以外の場所に郵便物の届け先を設けられるサービスです。一方、
バーチャルオフィスの場合は事業用の住所や会議室などを借りられるほか、
バーチャルオフィスの住所に届いた郵送物を転送してもらえる場合もあります。
もし単に郵便物の届け先を確保したい場合は、私書箱が向いているでしょう。
しかし、自宅を拠点に起業する方など、ビジネスのベースとなるさまざまな機
能を利用したい方にはバーチャルオフィスがおすすめです。
ぜひこの記事を参考に私書箱とバーチャルオフィスの違いを把握して、ご自身
に適したサービスを見極めてみてください。