近年のペットブームに伴い、ペットホテルの独立開業を目指す方が増えてきてい
ます。ペットホテルのニーズは年々上昇傾向にあり、特に大型連休や年末年始と
いった⾧期期間中は大きな売上を見込めることから、動物好きの方におすすめの
起業ジャンルです。
とはいえ、ペットホテルは単にスペースを用意してケージを設置するだけでは営
業できません。まずは開業にあたって必要な要件や資格等をしっかりと把握し、
スムーズな開業に向けて着実に準備を進めることが大切です。
そこで、今回はペットホテルの概要や種類、独立開業のために必要な要件を解説
しながら、開業に役立つ資格を3つピックアップしました。また、自宅を拠点と
したペットホテル業の運営を検討している方におすすめしたい「バーチャルオフィ
ス」の魅力もあわせてご紹介します。
ペットホテルとは、愛犬や愛猫といったペットのための宿泊施設です。たと
えば旅行や出張などで、飼い主が数日間家を空ける場合に多く利用されます。
料金やサービス内容はそれぞれのペットホテルによって異なりますが、滞在
プランとしては宿泊プランと日帰りプランの両方を提供しているケースが一
般的です。
また、利用可能なペットの種類については基本的に犬・猫専門のところが多
いものの、なかにはウサギやハムスター、鳥類などの小動物を対象としてい
る場合もあります。
なお、ペットホテルは2023年11月時点では全国に約6,000軒以上あるといわれ
ています。独立開業して数ある施設のなかから自店を選んでもらうためには、
「ペットを預かり、衣食住のお世話をする」だけでなく、+αの魅力的なサー
ビスを付帯させて差別化を図る必要があるでしょう。
ペットホテルには、大きく分けて「ペットホテル専門型」「動物病院併設型」 「トリミングサロン併設型」の3つの運営形態があります。ここでは、それぞれ の種類における特徴を押さえておきましょう。
ペットホテル専門型とは、ペットホテルのみを運営しているタイプです。ペット の衣食住のお世話に特化していることが大きな特徴で、飼い主への連絡をこまめ に行っていたり、預かっている期間中のペットの様子を写真や動画で共有する サービスを提供していたりと、手厚い対応で集客を図っているところが多くみら れます。
動物病院併設型とは、動物病院に併設されているタイプのペットホテルです。 ペットの体調不良等に対して迅速に対応してもらえることから、特に持病を持つ ペットの預け先として大変人気です。
トリミングサロン併設型とは、トリミングサロン内、あるいはサロンに隣接して ペットホテルが設けられているタイプです。ペットホテルとトリミングサロンを 一度に利用できるため、「せっかくなら預けている間にトリミングをしてもらい たい」と考える飼い主から重宝されています。
ペットホテルの開業に興味をお持ちの方のなかには、「ペットシッター業」を
比較検討している場合もあるのではないでしょうか。どちらも『ペットを預か
る仕事』ですが、ペットホテルはペットを施設内で預かるのに対し、ペット
シッターではペットのいる家に出向いてサービスを提供します。
そのため、施設の用意が不要で、ペットを預かるための環境を整える必要もな
いペットシッター業のほうがより気軽に始められる印象です。ちなみにペット
ホテル運営とペットシッターは比較的両立しやすいことから、ペットホテル事
業とペットシッター業をあわせて行うケースも多く存在します。
ペットホテルの開業にあたっては、管轄の自治体に「第一種動物取扱業(保 管)」の届け出を行う必要があります。登録せずに営業を行うと20万以下の罰 金を支払う罰則が課されるため、下記の登録要件をもとにきちんと申請するこ とが大切です。
設備に関する要件 | ペットホテルに必要な飼養施設の条件を満たすこと |
提出申請書 |
・第一種動物取扱業登録申請書 ・登記事項証明書(法人の場合) ・欠格事項証明書 ・役員氏名・住所記載書類(法人の場合) ・飼養施設の平面図 ・飼養施設付近の見取り図 |
資格要件 | 「動物取扱責任者」の資格取得が必要 ※資格を取得後、下記のいずれかの書類の提出が必要 ・認定証など認定研修の確認書類 ・実務経験証明書 ・学歴証明書 ・資格証明書 |
説明職員に関する書類 | ・事務所以外で重要事項を説明する職員の要件証明書類 ・事業所毎の重要事項を説明する職員の要件証明書類 |
なお、「動物取扱責任者」の資格取得要件は各自治体によって多少異なりますが、一般的には以下の要件のうちのいずれか1つに該当する必要があります。
・獣医師または愛玩動物看護師の免許を取得している
・半年の実務経験+所定の教育機関を卒業している
・半年の実務経験+所定の資格を取得している
上記の「所定の教育機関」や「所定の資格」は自治体によって異なるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
ここでは、ペットホテルの開業にあたっておすすめしたい資格を3つご紹介します。
・ペットホテルソムリエ資格
・ペットシッターアドバイザー資格
・愛玩動物飼養管理士資格
ぜひ資格取得によってペットの管理に対する知識を深め、自信を持ってペットホテルの開業を目指しましょう。
「ペットホテルソムリエ資格」は、日本生活環境支援協会(JLESA)が運営して いる資格試験です。この資格を所有していると、ペットホテル業務に必要な設 備環境や求められるサービス、開業・経営に関わることなど、ペットホテル全 般の知識に精通していることを証明できます。
受験要件 | なし |
受験方法 | オンライン |
合格基準 | 70%以上の評価 |
受験費用 | 10,000円(税込) |
公式サイト | https://www.nihonsupport.org/petshikaku/pethotel/ |
「ペットシッターアドバイザー資格」は、日本インストラクター技術協会
(JIA)が認定する資格です。犬や猫といった種類別、さらには性別ごとのお世
話方法をしっかりと熟知していることを証明できます。
「ペットシッターアドバイザー」との名称ですが、ペットシッター業とペット
ホテル業には共通する業務も多いことから、実力の証明として大いに役立つで
しょう。
受験要件 | なし |
受験方法 | オンライン |
合格基準 | 70%以上の評価 |
受験費用 | 10,000円(税込) |
公式サイト | https://www.jpinstructor.org/shikaku/petsitter/ |
「愛玩動物飼養管理士資格」は、日本愛玩動物協会が認定する資格試験です。
愛玩動物(ペット)の持つ習性や正しい飼い方といった基礎知識のほか、動物
愛護管理法・ペットフード安全法などの動物関係法令に関する深い見解、さら
には動物愛護の普及活動を行うために必要な知識を有していることを証明でき
ます。
ペットホテルの運営に活かせる内容を多く学べるだけでなく、動物取扱責任者
の資格取得要件である「所定の資格」に愛玩動物飼養管理士資格を認定してい
る自治体も多々みられることから、ぜひ積極的に取得を目指すとよいでしょう。
受験要件 | 2級:該当年度の4月1日時点で満15歳以上、かつ指定の講座を受講した方 1級:2級の資格を有し、かつ指定の講座を受講した方 |
受験方法 | 通信教育完了後に会場にて受験 |
合格基準 | ― |
受験費用 | 2級:8,000円(講座料金:32,000円)/税込 1級:20,000円(講座料金:34,000円)/税込 |
公式サイト | https://www.jpc.or.jp/kanrishi/ |
自宅を拠点にペットホテルの開業を検討している方のなかには、法人登記時に
自宅の住所を「本店所在地」として登記申請することを検討している場合もあ
るでしょう。しかし、自宅の住所で登記を行うと、その住所が国税庁の「法人
番号公表サイト」等で公開されてしまうことから、プライバシーが脅かされる
恐れがある点に注意が必要です。
登記をしなくても、HPや名刺に自宅住所を記載しても、自宅住所が公開される
為、同様です。
そこでおすすめしたいのが、ビジネス用の住所をレンタルできる「バーチャル
オフィス」です。バーチャルオフィスの住所で法人登記を行えば、自宅を拠点
に営業していても自宅住所が公開されることはありません。
自宅の住所を使用する「手軽さ」や「低コスト」といったメリットよりも、
バーチャルオフィスを利用して得られる「安全性の高さ」を優先することで、
プライバシーが守られた環境で安心して事業活動に携われるでしょう。
ペットホテルを開業するためには第一種動物取扱業「保管」の申請が必要で、
その申請にあたっては「動物取扱責任者」の資格取得が求められます。また、
ペットシッターや動物愛護に関する深い見解を証明する資格を持っていると“信
頼性の高い魅力的なペットホテル事業者”といった印象を与えられ、有利に運営
を進められるでしょう。
ペットと飼い主が安心して利用できるペットホテルの開業を目指して、まずは
ぜひ資格取得からチャレンジしてみてください。