近年は日本企業の海外進出が活発化している一方で、逆に日本での会社設立を図る海
外企業も増えてきています。
世界的な経済大国である日本への進出はメリットが大きいですが、その半面「法人設
立に向けて煩雑な手続きが発生する」「法人名義の口座開設手続きが困難」といったハードルがある点に注意が必要です。
そこで、今回は海外企業が日本で会社を設立する際の主な注意点を解説するとともに、
設立支援を専門家に依頼するメリットを解説します。
さらには、日本進出成功に向けてぜひ利用したい「バーチャルオフィス」の魅力につ
いてもまとめました。
日本での事業活動を検討している海外在住の方は、ぜひ参考にしてみてください。
日本で会社を設立する際には、下記のような多くの書類を準備する必要があります。
・登記申請書
・定款
・資本金払込証明書
・就任承諾書
・発起人・取締役の印鑑証明書
・印鑑届書
上記のうち、海外在住の方が注意すべき書類は「発起人・取締役の印鑑証明書」
です。
海外在住(日本に印鑑証明書がない)の方の場合は印鑑証明書を取得することが
できないため、その代わりとして「サイン証明書」を取得する必要があります。
サイン証明書の取得にあたっては、サインをする書類を在住国に所在する役所に
持参し、役人の面前でサインをして認証してもらわなければなりません。申請書
類は事前に日本から取り寄せる必要があり、その分手間と時間がかかる点に注意
しましょう。
また、登記申請書も海外在住の方にとって注意したい書類のひとつです。
もし外国語で作成された書面を添付する場合、基本的にはそのすべてに日本語の
訳文を添付しなければなりません。(※翻訳者の資格は不問)
ただし、翻訳を省略できる場合もあるため、法務省の公式サイトに記載されてい
る「商業登記の申請書に添付される外国語で作成された書面の翻訳について」を
参照のうえで的確に準備を進めていきましょう。
法務省「商業登記の申請書に添付される外国語で作成された書面の翻訳について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00102.html
海外企業が日本で会社を設立する際には、法人口座の開設手続きが極めて困難であ
る点にも注意が必要です。
日本の金融機関においては「代表取締役の住所が日本にない場合はその会社の口座
開設を行わない」といった方針があり、たとえ代表取締役の国籍が日本であっても、
住所が海外であれば法人口座を開設できません。
なかには「日本で納税すること」「日本で身元保証人を設けること」などの条件を
クリアすれば、法人口座開設に向けた審査を行ってくれる金融機関もみられます。
とはいえ、原則としては“海外在住の代表取締役は会社名義の銀行口座を開設できな
い”と認識しておきましょう。
もちろん法人口座の開設は日本での法人設立において必須ではなく、個人口座を会
社の口座として使用する形でも問題ありません。
ただし、法人口座がないとクライアントがお金を振り込む際に不安を感じることも
多いだけでなく、税務の観点からみても会社の取引に個人口座を使用することは望
ましくありません。
そのため、まずは暫定的に個人口座を準備したうえで、ゆくゆくは日本在住の方に
共同で代表取締役を引き受けてもらうなどの方法で法人口座を設けることをおすす
めします。
海外在住の方が日本に会社を設立する場合は、書類の準備や作成、提出などに大 変多くの手間がかかるため、不安な方は専門家にサポートしてもらうとよいで しょう。主に「司法書士」「行政書士」「税理士」が会社設立手続きのサポート を行っていますが、扱える分野や費用は以下の通りに異なります。
専門家の種類 | できること | 費用相場 |
司法書士 | 登記申請や定款作成など、会社設立に関わるすべての手続きの代行が可能 | 5万円~15万円程度 |
行政書士 | 定款作成・許認可申請 ※介護福祉や労働者派遣といった一部業種の申請代行は社労士への依頼が必要 |
5万円~10万円程度 |
税理士 | 税務相談・税務申告の代行 | 5万円~15万円程度 |
上記の特徴から、会社設立手続き全般の代行を依頼したい場合は「司法書士」、
許認可申請や定款作成のみを依頼したい場合は「行政書士」、税務関係の届出書
の作成や提出を代行してもらいたい場合は「税理士」が適しています。
もちろん自力で会社設立手続きを行えばコストを抑えることができますが、日本
での事業活動におけるさまざまな準備を行いながら自分で書類を作成したり、申
請したりすることは大きな負担になるでしょう。
一方、専門家へ依頼すれば手間を省けるだけでなく、ミスなく確実に設立手続き
を進めることができるため、より効率的に日本進出を叶えられます。
海外在住の方が日本で会社を設立する際には、手続き面のほかに「ビジネスの拠
点をどこに置くのか」といった点で悩むケースが多くみられます。
登記申請の際には「本店所在地」を記載する必要があり、登記手続きまでにビジ
ネスの拠点となる住所を取得しなければなりません。
その際におすすめしたいのが、事業用住所のレンタルサービスを行っている
「バーチャルオフィス」です。物理的なスペースはなく、あくまで住所やFAX番号
といった基本機能のみ借りられるシステムとなっており、賃貸オフィスを借りる
よりも圧倒的にリーズナブルな費用で利用できます。
また、バーチャルオフィスの住所は都心一等地に多く、有名な住所を手軽に使用
できることもうれしいメリットです。
知名度がない状態で日本へ進出することは不安も大きいですが、ネームバリュー
の高い住所を拠点にすることによってビジネス活動を有利に進められる可能性が
あります。
なかには、「ひとまず日本にある知り合いの住所を本店所在地として登録してお
こう」とお考えの方もいるでしょう。
しかし、登記申請した住所は国税庁の法人番号検索サイト等に記載され、不特定
多数の人に公開されてしまうことから、プライバシーを考慮すると決して望まし
い方法とはいえません。
バーチャルオフィスの住所で申請すれば、そういったリスクを危惧することなく
安心感を持って日本での事業活動を行えます。
このようにコスト・信頼性・安全性において大きなメリットがあるため、物理的
なスペースを必要としない場合はぜひバーチャルオフィスの導入を検討してみて
ください。
海外在住の方が日本で会社を設立する場合は、「サイン証明書の取得に手間がか
かる」「日本在住でない場合は基本的に法人口座を開設できない」といった点に
注意が必要です。
また、登記申請や許認可申請など煩雑な手続きが多く発生するため、自力での対
応が不安な方、あるいはなるべく効率的に準備を進めたい方は専門家によるサ
ポートを受けるとよいでしょう。
また、登記時に申請する本店所在地に関してお困りの場合は、事業用に適した住
所をお手頃価格でレンタルできる「バーチャルオフィス」を利用されてはいかが
でしょうか。
ぜひサポートサービスや手軽に利用可能なツール等を活用しながら、日本での事
業活動をスムーズにスタートさせましょう。