日本に居住している外国籍の方はもちろん、海外在住の外国人も日本の不動産を購入できます。ビザ等の制限がなく、他国に比べてリーズナブルに物件が手に入ることから、外国人による日本の不動産投資事例は年々増えてきています。
ただし、日本での不動産投資にはメリットだけでなくリスクもあるため、事前に把握したうえで慎重に検討するとよいでしょう。また、ローンの利用を希望する場合は、外国人が利用可能なローンや要件についてあらかじめ確認しておくことが大切です。
そこで、今回は日本における不動産投資市場の動向に触れながら、外国人が日本で不動産投資を行うメリット・デメリットや外国人向けのローンを取り扱う金融機関をご紹介します。また、税法上のメリットから資産管理会社の設立を検討している方に向けて、登記先として利用すると便利な「バーチャルオフィス」の魅力についてもまとめました。
日本での不動産投資に興味をお持ちの外国籍の方は、ぜひ参考にしてください。
近年、日本の不動産投資市場は好調の一途をたどっています。
世界的な総合不動産サービス会社であるJLLの調査によると、2023年の第1~3四半期における日本の不動産投資額は2兆7,483億円で、前年の同期と比較すると40%増となりました。一方、世界全体における同期の不動産投資額は前年同期比50%減であり、まさに日本の市場のみが好調であったことがうかがえます。
参考:JLL「インベストメント マーケット サマリー 2023年第3四半期」
そういった状況下において、外国籍の方が日本の不動産を購入する事例が年々増加傾向にあり、特に東京都心エリアの不動産が外国人投資家の注目を集めている印象です。外国人向けに日本の不動産を紹介するサイトが増えてきているなど、手軽に物件を検索・購入できる体制も整いつつあり、外国人による日本の不動産投資はますます活発化していくことが予想されます。
続いては、外国人が日本で投資用物件を購入するメリット・デメリットを押さえておきましょう。良い面だけでなくリスクにも目を向け、日本での不動産投資が得策かどうかを慎重に検討することが大切です。
日本では外国人の不動産購入に対する規制が設けられておらず、外国人購入者を対象とした追加課税等もありません。国によっては外国人による土地の購入を禁止したり、購入可能な物件に制限があったりするケースもありますが、日本において外国人は日本人とほぼ同じ条件で不動産を入手できます。
日本の不動産価格は他国に比べて割安であり、少額から不動産投資を始められることもメリットのひとつです。また、利回りも3~10%ほどと他の先進国に比べて大きく、安定した利益を見込める点を魅力に感じる外国人投資家も多くみられます。
「カントリーリスク」とは社会情勢に基づくその国特有のリスクのことで、日本はそのリスクが低い“Aランク”に認定されている国です。リスクが高い国の場合は政権の不安定さや民族間の対立等によって不動産の価値が急降下する恐れがありますが、日本の場合はそういったリスクが低く、外国人投資家に安心感を与えています。
上記のようなメリットがある一方で、外国人が日本の不動産に投資する際には「自然災害による影響」に注意が必要といわれています。日本では地震や津波などの自然災害が発生するリスクが他国よりも高いとされているため、新耐震基準が適用されている建物かどうかを確認したうえで購入するなどの対策が重要です。
日本では少子高齢化が加速化しており、今後の人口減少に伴って投資物件の空室率が高まる恐れがある点もデメリットとして挙げられます。地方エリアではなく都市部の物件を購入するなど、空室リスクを踏まえたエリア選定・物件選定が重要です。
日本での不動産投資について検討するにあたり、「外国人でも住宅ローンを組
めるのか」と気になっている方もいることでしょう。外国人も日本人同様に住
宅ローンを組むことは可能ですが、多くの金融機関が下記のような審査基準を
設けています。
・日本で自分が住むための住宅が対象(投資目的の住宅は対象外)
・永住権を取得している、あるいは配偶者が日本国籍を有している
・日本に居住している
・日本語を理解できる など
また、主要金融機関においては以下のような利用要件が定められていることが
多く、原則として「投資・資産運用目的で不動産を購入する場合に一般的な住
宅ローンは利用できない」と認識しておく必要があります。
借入時年齢 | 20歳以上で(上限:65~70歳程度) |
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完済時年齢 | 完済時の年齢が75~80歳程度 |
勤続年数 | 最低1~3年程度(正社員が要件の場合もあり) |
年収 | 最低年収200~500万円程度 |
団体信用生命保険 | 原則として加入 |
物件の要件 | 建築基準法に基づく住宅であること ・敷地が所有権であること |
融資額 | 1億円/5億円まで ※住宅購入金額の7~8割程度、金融機関による担保評価額の9割程度まで |
融資期間 | 1~35年以内 |
融資金利 | 変動金利・固定金利選択型・全期間固定金利型など |
返済方法 | 元利均等返済・元金均等返済・ボーナス払い併用など |
保証人・保証料 | 保証会社の保証をつけることが要件となっている金融機関が多い |
事務手数料 | 金融機関によって3~10万円程度などさまざま |
ちなみに、主要金融機関においては永住権を必須としているところが多いですが、以下でご紹介する金融機関では永住権のない外国人にも住宅ローンを提供しています。永住権のない外国籍の方が日本でマイホームを取得する際は、ぜひチェックしてみるとよいでしょう。
ローンの主な利用要件(外国人向け) | ・日本に居住している外国籍の方 ・借入時に満20歳以上、かつ完済時に満80歳未満の方 ・日本語または英語で意思疎通可能な方 ・所定の団体信用生命保険に加入できる方 ・前年度の年収が500万円以上の方 |
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公式サイト | https://www.smbctb.co.jp/ |
ローンの主な利用要件(外国人向け) | ・日本に居住している外国籍の方 ・借入時に18歳以上65歳未満、かつ完済時に85歳未満の方 ・日本語で意思疎通可能な方 ・団体信用生命保険に加入できる方 ・税込年収400万円以上の方 |
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公式サイト | https://www.surugabank.co.jp/surugabank/ |
ローンの主な利用要件(外国人向け) | ・日本に居住している外国籍の方 ・借入時に20歳以上65歳以下、かつ完済時に80歳未満の方 ・新生総合口座パワーフレックスを開設可能な方 ・団体信用保険に加入できる方 ・日本国籍を有する、あるいは永住許可のある外国籍の配偶者が連帯保証人となることが可能な方 ・勤続2年以上の正社員または契約社員で、かつ前年度の年収が300万円以上の方(自営業の場合は業歴2年以上、かつ2年平均300万円以上の所得がある方) |
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公式サイト | https://www.sbishinseibank.co.jp/ |
ローンの主な利用要件(外国人向け) | ・日本に居住している外国籍の方 ・借入時に20歳以上65歳以下、かつ完済時に80歳未満の方 ・新生総合口座パワーフレックスを開設可能な方 ・団体信用保険に加入できる方 ・日本国籍を有する、あるいは永住許可のある外国籍の配偶者が連帯保証人となることが可能な方 ・勤続2年以上の正社員または契約社員で、かつ前年度の年収が300万円以上の方(自営業の場合は業歴2年以上、かつ2年平均300万円以上の所得がある方) |
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公式サイト | https://www.chugin.co.jp/ |
ローンの主な利用要件(外国人向け) | ・在留資格を有する外国籍の方 ・満20歳以上64歳以下の方 ・年収300万円以上の方 ・交通銀行の口座を有する方 |
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公式サイト | http://www.bankcomm.jp/ |
先述のように、投資・資産運用を目的として日本の不動産を購入する場合に一般的な住宅ローンは利用できないため、「不動産投資ローン」を検討するとよいでしょう。ここでは、外国人向け不動産投資ローンを取り扱う金融機関をいくつかご紹介します。
ローンの主な利用要件(外国人向け) | ・日本に居住している外国籍の方 ・前年度の年収が700万以上の方 ・対象エリア:東京・神奈川・埼玉・千葉 |
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公式サイト | https://www.smbctb.co.jp/product/loan/investment_loan.html |
ローンの主な利用要件(外国人向け) | ・日本に在留している外国籍の方 ・対象エリア:東京都心並びに近郊地域(詳細は要問合せ) |
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公式サイト | https://www.shinsei-if.com/real-estate/buyer/ |
ローンの主な利用要件(外国人向け) | 在日居留資格を有する中国籍の方 ※在日居留資格がない場合は制限あり(詳細は要問合せ) |
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公式サイト | https://www.chugin.co.jp/ |
ローンの主な利用要件(外国人向け) | ・在留資格を有する外国籍の方 ・年収500万以上の方 |
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公式サイト | http://www.bankcomm.jp/ |
資産運用を目的として日本の不動産を購入する際は、日本に資産管理会社を設立すると節税につながります。ただし、会社の設立時には法人登記手続きを行う必要があり、その際に申請する事業用拠点をどこに設けるべきかお悩みの方もいるのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいサービスが、事業用住所のレンタルを行っている「バーチャルオフィス」です。バーチャルオフィスとは物理的なスペースを持たない架空のオフィスのことで、外国人の方がバーチャルオフィスを利用して登記申請を行う場合は主に次のようなメリットを得られます。
・少ない資金で資産管理会社の拠点を確保できる
・運営会社によっては届いた郵送物を指定の場所へ転送してもらえる
・法人設立時の手続きをサポートしてもらえる場合もある
具体的な魅力について、以下で詳しく見ていきましょう。
バーチャルオフィスの費用は運営会社によって異なりますが、一般的には登録料が5,000円~10,000円程度、月額利用料が数千円程度です。物理的なオフィスを借りる場合に比べて、圧倒的に少ない資金で資産管理会社の拠点を確保できます。
運営会社にもよりますが、バーチャルオフィスの住所に届いた郵送物を指定された場所へ転送するサービスを行っているところも存在します。なかには海外の住所へ送ってもらえるケースもあり、海外在住の方にとって大変便利です。
利用するバーチャルオフィスのサービス内容によっては、資産管理会社の登記申請手続き等をサポートしてもらえる場合もあります。外国人の方が日本で法人を設立する際には煩雑な手続きを踏む必要があるため、自力での申請に不安を感じる方はそういったサポートサービスを実施している運営会社を選ぶとよいでしょう。
日本の不動産は価格が割安で利回りが安定しているほか、外国人の不動産購入に対する規制が設けられていないため、日本で不動産投資を行う外国人投資家が増えてきています。自己資金が足りない場合は「不動産投資ローン」の利用がおすすめですが、金融機関によってさまざまな利用要件が設定されている点に注意しましょう。
なお、日本で投資用物件を購入したら、資産管理会社を設立して物件を管理すると税負担を大幅に抑えられます。その際はぜひバーチャルオフィスの住所で登記申請を行い、運営コストも軽減しながらスマートな資産運用を目指してみてください。